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評価:
宮永 博史
祥伝社
¥ 798
(2009-07-28)
コメント:企画力だけでなく、経営書などに含まれる内容も載っています。読み応えがある本です。
Amazonランキング:
37650位
Amazonおすすめ度:
技術オリエンテッドから、製品オリエンテッドへ。
具体例豊富な技術経営の本
自分に何か足りないな、と思ったら読むべき本
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豊富な事例と明確な主張で大変わかりやすい内容です。
事例の割には参考文献が少ないということは、著者自身の体験や収集データが多いこと。解説されている商品数も膨大です。
一章に相当する一則あたりの参考データが多いので、独断と偏見で私が興味をもった所だけ挙げていきます。
技術を解説しているように見えますが、マーケティングにも通じており、その方面からも参考にできるでしょう。
本書は九則で構成されています。
第一則 現場は観察するだけでなく、実際に体験する。
第二則 一面からのモノの見方にこだわらない
第三則 使う人が求める究極の我儘こそ、発想基準
第四則 はじめにコンセプトありき
第五則 優れた技術は感動を生みだす
第六則 最初から二兎を追う
第七則 異なる分野の技術を結集する
第八則 技術は分かりやすく翻訳する
第九則 商品はロングセラーを前提に考える
第一則で、松下電器での新製品開発の過程が書かれています。ここでは、一般的なコンセプト想像のプロジェクトと違う発想が挙げられています。そして、偶然を引き寄せる力:セレンディピティの具体例があります。ただし、著者も言っているとおり、セレンディピティは準備したところに現れ、努力して呼び寄せるものです。決して「たなぼた」ではありません。
第二則では規制強化と規制緩和からの発想と製品化が挙げられています。二酸化炭素削減も、水不足も、即、ビジネスになる世の中です。規制の数値が変われば、当然商品も変わってくる。その時、視点をどこに当てるかをTOTOの事例等で解説しています。
第六則、最初から二兎を追うでは、カスタム化とそれに相反する短納期・低価格を同時に追い求めることが可能について。カスタム化は、顧客の要求に合わせていくと生じますが、価格が高く納期が長くなる恐れがあります。プラットフォーム化することにより、それを乗り越えた安川電機の例が挙げられています。
そして、プラットフォーム化の次は人材育成。人材募集には、会社の知名度上げる必要がありますが、知名度を上げにくい部品メーカーが成功した例として、第五則で村田製作所を挙げています。
自転車に乗る子供が多ロボット「ムラタ セイサク」君と、一輪車に乗る「ムラタ セイコ」ちゃん。わたしも大好きなのですが、開発にこういう目論見があったとは知りませんでした。
ムラタセイコちゃんはこちらでご紹介しています。
http://aiedu.jugem.jp/?eid=1645それから、経営研究会などで学んだ事例からピックアップしていくと、
第七則のメーカー側からブルドーザーなどの建機をコントロールしてしまう機能。これは、建機が盗難にあうと遠隔操作でロックさせてしまう、メンテナンスの時期や状態を自動的に感知するなどのものです。現在では建機だけでなく多くのメーカーで使われています。
販売後もメーカーに主導権がある好例です。
第九則のロングセラーはブームを作らないにつながります。
ブームは必ず失速する。それよりも、ロングセラーを生みだすモノづくりと人づくりに賭ける。
大塚製薬とサントリーの事例が挙げられています。
これは、個人で生きるか組織で生きるかの選択でもあります。後者を望む私としては、とても参考になりました。
事例をピックアップして読むのではなく、企画運営または、経営をベースに読んでいくと、事例に振り回されずに理解できるようです。
さて、第九則をもとに話をそらします。
私は今、勝間和代さんにとても興味があります。
彼女のは個人であり、完全にブームです。同じく神田昌典さん系の平さんは組織化しており、ブームにならないよう商品を徐々に増やしています。今後どう変化していくのか、興味津々なのです。
本田先生へ
さっと流して読めない本なので、時間がかかると思いますが、読んで良かったを実感できます。